◆◆◆新版｢資本論｣の研究◆◆◆

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＃０２２：第１篇 資本の諸変態とそれらの循環 第１章貨幣資本の循環 �Dp49〜p104

　＃０２０：「資本論」第二部とば何かで述べたように、第二部では資本の生産過程だけでなく、流通過程を通した資本の運動を研究します。第二部の難しさの一つは、見かけ上の困難を解決するために、貨幣の媒介を考慮に入れた複雑な叙述が多いことがあります。また、ヘーゲル風の言い回しや、しつこい繰り返しが何度もあり、読み解くのにたいへんですので、少しずつ進めましょう。

　まず、第１章「貨幣資本の循環」を模式的な図にしてみましょう。資本家が得られた剰余価値をすべて個人的に消費するという（後に研究するが、単純再生産を）前提にすると、下のようになります。（右側は新書版の研究での模式図、左側は新版の研究で今回改定した模式図です。だいぶ分かりやすく正確になりました。【2021/11/27】）マルクスはこの基本的な運動の場面場面で、いろいろな味付けをしているわけです。例えば、Ｇ−Ｗ＝Ｐｍ＋Ａはもうすでに資本関係、つまり一方に労働力以外に何も持たない「自由な労働者」が多数存在し、それに相対して生産手段と生活手段を所有する資本家がいることを前提としている（�Dp59〜p61、第一部の最後の「本源的蓄積」参照）、というような具合にです。

2021年の新版研究で訂正・発展した模式図　　2007年の新書版研究で作成した模式図　　
　

�Dp50〜p51
　少しずつ見てみましょう。第１章の冒頭部分でいきなりＧ−Ｗ…Ｐ…Ｗ´−Ｇ´の定式が示されます。すでに、第一部で論じていると言うのです。（第二編第3章第2節a商品の変態、第二編第4章第1節）そして、研究の前提として、生産された諸商品が価値どおり順調に販売されるとする、としています。

第1節　第一段階、G−W　�Dp51〜p64
　第1節は第一段階のG−Wです。貨幣の商品への転化で、買われる商品W（Ware）は労働力A(Arbeitskraft)と生産手段Pm（Produktionsmittel）とに一定の割合で分かれ、となります。市場で購入した労働力と生産手段は、生産過程で合体され、剰余価値を創造する生産資本Pとなります。ここまでは価値の変化はありません。Pの価値はA+Pmに等しく、A+Pmの価値はGと同じ、すなわちGとPの価値は等しい。（�Dp54）　同じ資本価値が貨幣形態から生産的形態に転化した、貨幣資本から生産資本への転化である、と言うわけです。（�Dp55）

�Dp55〜p61
　資本の循環の、第一段階の説明はこれで終わりで、次からはいろんな味付けとくり返しが出てきます。貨幣資本が労働力と生産手段を購入しうるのは「この能力は、貨幣資本が資本であることから生じるのではなく、貨幣資本が貨幣であることから生じる。」（�Dp55）とか、「労働が貨幣で購買される労働力購買の形態」（�Dp57）とか、「商品である労働力が買いうるものであるということが特徴的なのではなく、労働力が商品として現れることが特徴的なのである」（�Dp58）とか、（あまり意味があるとは思えないヘーゲル風言い回しが【2021/11/24】）いろいろ出てきますが、これらは要するに資本の循環過程としてのG-Aは、生産手段を所有する資本家と、生産手段から引きはがされて労働力しか所有していない労働者が市場で相対するという、階級関係を前提する（前出、�Dｐ59〜p61）ということを、手を変え品を変え、くり返し述べているのです。

�Dp61〜p64
　次に貨幣資本の機能の把握についての、二つの誤った見方が批判されます。「第一には、資本価値が貨幣資本として果たす…諸機能が、誤って資本価値の資本性格から導き出される。」、つまり資本だから労働力を買いうるという誤りについて、「第二には、その逆に、…貨幣の本性から導き出される。」、つまり貨幣だから労働力を買いうるという誤りです。これについては、階級関係がそうさせるのであるということは、前段ですでに述べていますので、マルクスは奴隷の売買は貨幣があっても奴隷制がなければできないという例（�Dp61）と、ロシアの農民解放直後の農村労働者についての簡単な論及（�Dp63〜p64）で終わりにしています。大事なのは、労働力が商品として現れるのは、第一部の最後で研究した、「生産諸手段と労働力との本源的結合を解体した歴史的諸過程を想定して」（�Dp62）いると述べいて、「本源的蓄積」の復習になっていることです。

ーー日本の「本源的蓄積」は？

第2節　第二段階、生産資本の機能　�Dp64〜p70
　労働力も生産諸手段もそのままでは売ることができませんので、流通過程を出て生産過程に入って生産的に消費され、新たな商品形態となります。この運動は定式で表され、点線は資本の流通が中断され、資本は商品流通の部面から出て生産部面に入り込んでいるが、資本の循環過程が続いていることを示しています。（�Dp65）

�Dp66
　次にマルクスは、少々面倒くさいことを言い出します。労働者にとっては彼の生活を維持するために（上図の「労働者の個人的消費」）、Ａ−Ｇ−Ｗという行為を短い期間で反復する必要がある、だから、すべての生活必需品が絶えず商品として売られているという、高度な商品生産社会が必要だというのです。その次が大事です。

�Dp66〜p67
　商品生産が一般的であると前提されるならば、こんどはそのことが、社会的分業の絶え間ない増進、すなわちある特定の資本家によって商品として生産される生産物の特殊化の絶え間ない進展、互いに補足し合う生産諸過程の自立的な生産諸過程への分割の絶え間ない進展を、生じさせる。したがって、G-Aが発展するのと同じ度合いでG-Pmが発展する。すなわち、同じ程度に、生産諸手段の生産が、それらを生産諸手段として用いる商品の生産から分離するのであり、また、この生産諸手段は、どの商品生産者自身に対しても、彼が生産するのではなく彼が自分の特定の生産過程のために購買する商品として、相対する。（生産諸手段は、各商品生産者の生産部門から完全に分離された自律的に経営される生産諸部門から出てきて、商品として各商品生産者の生産部門に入り込むのであり、したがってそれは購買されなければならない。【2021/11/25追加】）

　つまり、原材料の自家生産はどんどんなくなり、例えばある生活必需品を生産する産業の原材料などを、別の諸産業が供給することが一般的となるということです。これは、流通過程を介して複雑に絡み合う、現代の産業を見れば分かるでしょう。また、こうした把握が後に第三篇の「再生産論」（の「二大生産部門」の分析【2021/11/25追加】）に発展していくわけです。

�Dp67
　また、こうした商品生産の高度な発展が、商品生産の遅れた形態を地域的にも滅ぼしていく、そして「いっさいの商品生産の資本主義的商品生産への移行促進する。」と述べ、その例として「資本主義貿易が中国人、インド人、アラビア人などのような諸民族に与えた最初の作用」をあげますがこれは、イギリスの自動紡績機がインドの家内手織り工を滅ぼしたということ（�Bp757参照）などを言っているのだと思います。資本主義的商品生産は、まず、流通部面を支配し、次に生産部面も支配していきます。

�Dp68〜
　次の部分からは第七草稿から第六草稿に代わり、脈絡がありませんが、不破さんが注目する、「経済的社会構成体」についての、第一部とは少し角度を変えた言い方です。第一部第三篇では、「この剰余労働が、直接生産者すなわち労働者からしぼりとられる形態だけが、もろもろの経済的社会構成体を区別するものであり、たとえば奴隷制の社会を賃労働の社会から区別するのである」（第7章 剰余価値率 第1節 労働力の搾取度�Ap374）と、搾取のされ方に注目しました。これは、剰余価値について論じれば当然です。

�Dp68
　ここでは「生産の社会的形態がどうであろうと、労働者と生産手段とはつねに生産の要因である。…およそ生産が行われるためには、それらが結合されなければならない。この結合がなしとげられる特殊な仕方によって、社会構造のさまざまな経済的諸時代が区別される。」と、搾取のされ方は、労働力と生産諸手段との結合のされかたによって違うというわけです。特に資本主義的商品生産は画期的な搾取様式で、従来の経済的社会構成体を「比類なく大きく凌駕する」生産様式となります。

　実はまだ別の表現があります。「滅亡した動物種類の身体組織を認識するのに遺骨の構造がもつのと同じ重要性を、労働手段の遺物は滅亡した経済的社会構成体を判断するうえでもっている。なにがつくられるかではなく、どのようにして、どのような労働手段を用いてつくられるかが、経済的諸時代を区別する。」（第一部第三篇絶対的剰余価値の生産第５章労働過程と価値増殖過程�Ap313）と、道具（機械設備）の発展で、経済的社会構成体の時代的区別もできると言っているのもおもしろいと思います。

�Dp69
　労働力も生産諸手段も、生産過程で互いに結合されて、はじめて「生産資本」Pとなります。生産資本は生産的に消費され、それ自体の価値とともに剰余価値も新しい生産物に付け加えられます。定式は　生産過程Ｐから出てくる商品この生産物価値W´は、剰余価値をMとするとP+Mとなります。（マルクスは資本の商品形態をWまたはW´と、商品資本価値もWまたはW´と表すように、生産資本価値もP、生産過程もPと表しますので注意しましょう）

第3節　第三段階、W´−G´　�Dp70〜p86
　生産過程Pからは、価値増殖された資本が特殊な商品形態で出てきて、商品資本となります。（�Dp70）この後、マルクスはなぜ生産過程から出ていた特殊な商品が資本となるのか（資本機能をはたすのか）について、第一部での論議をしつこくむしかえします。（�Dp71〜p73）簡単に言えば生産過程から出てくるW´は、生産過程に入って行ったWが、剰余価値の生産によって価値増殖しているからだ、ということだと思います。綿糸何重量ポンドが「前貸し資本」のW=Pm+A=Pを表し、何重量ポンドの綿糸が剰余価値を表すのかというしつこい論議には付き合う必要はありません。W´−G´はその商品資本の、貨幣資本への転化だということです。

�Dp74
　次に、第六草稿から第五草稿に切り換わり、最初の部分で「資本の作用度」が取り扱われます。「販売の迅速さに応じて、同じ資本価値が生産物形成者および価値形成者として役立つ程度はおおいに異なり、再生産の規模は拡大または縮小するであろう。与えられた一資本の作用度が、その資本自身の価値の大きさにはある程度までしか依存しない、生産過程の諸力能によって条件付けられている、ということは、第一部で明らかにされた。ここでは、流通過程が、資本の価値の大きさに依存しない、資本の作用度――すなわち資本の膨張および収縮――の新たな諸力能を運動させることを明らかにされている。」

　何のことだかさっぱり？？でしたね、初めて読んだときは。「第一部で明らかにされた」というのは、（訳注でも第一巻の�Cp1051〜p1053が指示されていますが【2021/11/27追加】）労働の弾力性についてだと思います。
　第一部では、第七編第22章つまり「資本の蓄積過程」のなかの「剰余価値の資本への転化」の章のなかで、マルクスは採取産業や農業では新たな不変資本投資なしで、労働日の延長を賃金の割増なしで行うときは可変資本の前貸しも増やすことなしに生産を拡大することができることがあると述べています。これは「生産過程の諸力能」よって資本の大きさが変わらなくても生産を拡大できるということです。

　ここ（第二部）で言いたいことは、流通過程が（販売の迅速さ）が再生産の規模を拡大あるいは縮小することを明らかにする、ということだと思います。第5章の「通流時間」、第7章「回転時間と回転数」、第14章「流通時間」、第15章「資本前貸しの大きさにおよぼす回転時間の影響」などで論じられるのだと思います。

�Dp74〜p75　草稿が切り替わって論調がガラッと変わります。
　剰余価値を実現する、つまり剰余価値を貨幣に転化する、あるいは再生産を行うには、生産過程から出てきた商品のうち、不変資本Pm（第一部ではｃ）に相当する商品量（ここの例では1万重量ポンドの綿糸のうちの7440重量ポンド）と可変資本分A（第一部ではｖ）に相当する商品量（ここでは1000重量ポンドの綿糸）を超えて販売しなければなりません。剰余価値全部を実現するには全商品量（1万重量ポンドの綿糸全部）を販売する必要があります。大事なのはW´−G´は等価交換であり、労賃が高ければ剰余価値が減るだけで、商品の価値は部分でも全体でも変わりません。

10､000重量ポンド、価値500ポンドの綿糸商品の資本構成とそれを表す商品重量

形態	生産諸手段Pm(c)	労働力A(v)	剰余価値w´(m)
商品量（重量ポンド）	7､440	1､000	1､560
商品価値（ポンド）	372	50	78

【2021/11/27追加】

�Dｐ75〜p79
　マルクスはを詳しくと示して、wとgの扱いは、WとGの場合とはちょっと違うよと言ったあと、次からしつこくしつこく、同じことをくり返します。77ページの「資本価値Wが（w−gと*ykb）同じ流通行為W´−G´で行う流通については（w−gとは*ykb）事情が異なるのであって…最初の貨幣形態への復帰または再転化である。」、77ページから78ページにかけての「によって、貨幣資本は…第一の流通局面である。」、79ページの「したがって、ここでは二つのことが注意されなければならない。…その大きさだけである。」はほとんど同じことを言っています。

　この部分は難解な言い回しの中に、W´ｰG´のうちのW-Gは同じことの繰り返しだが、W´ｰG´のうちのw-gは別の経過をたどる、w（剰余生産物）は新たに生産過程から出てきて初めて流通部面に投げ込まれ、剰余価値gに実現され、資本家の「支出」（のちに論及される）として消費されます。最初に示した模式図にもあるようにGとgは別の軌道を描いています。【2021/11/29追加】

�Dp80
　「この分離は、ｇがＧに全部付け加えられるか、一部分が付け加えられるか、またまったく付け加えられないかに応じて、すなわちｇが前貸資本価値の構成部分として機能し続けるかいなかに応じて、資本の再生産過程において重要になる。」の部分は、第三篇での拡大再生産、単純再生産への伏線となっています。

�Dp80〜p86
　もうその次からは、オイゲン・デューリングが「蒙昧思想」と呼んだ、ヘーゲル風のおしゃべりです。「こうしてG´は、自己のなかで分化し、それ自身のなかで機能的（概念的）に自己を区別し、資本関係を表す、価値総額として表れる。」というところなどはヘーゲル論理学そのものです。ヘーゲル論理学を知らずに、このおしゃべりに翻弄されて、やたら訳注の間違いが目立ちます。（新書版の【2023/5/9追加】）ｐ７７末の訳注は間違いです。G´はもうＰｍもＡもＭも区別できない「没概念的形態」であるが、「４２２ポンド・スターリングの前貸し資本に等しい元金と、７８ポンド・スターリングの超過価値額」はわずかに残された「概念的形態」だと言っているので間違いではないのです。同じ間違いが（新書版の【2023/5/9追加】）ｐ８２の冒頭部分の訳注です。

　上段のうち二つの訳注を誤りとしたykbdataの解説こそ誤りで、新版ではマルクスの草稿に即して正しく解説されています。ykbdataこそ「蒙昧思想」に翻弄されたのでした。【2021/11/30】

�Dp86
　マルクスの、長い「ぐるぐる回しの蒙昧遊戯」が少し現実味をもってくるのが、貨幣材料の生産 の場合です。生産過程Ｐから出てくる商品形態として、直接Ｇ´が出てくる貨幣材料の生産でのＧ´＝Ｇ＋ｇという表現は、貨幣材料の生産以外のＷ´＝Ｗ＋ｗという表現と同じように、資本関係を「ほのめかす」ので「没概念的」ではない、と言っているのだと思います。この貨幣材料生産における定式は、後の応用のためにも重要です。他のことはあまり気にしなくてもよいでしょう。

　第４節 総循環　�Dp87〜p88
　ここではまずはじめに、マルクスは生産過程に入っていくWと、生産過程から出てくるW´は価値の大きさが違うだけではなくて、商品の素材的にも違うから、G−W…P…W´−G´は,それを考慮に入れるとG−W1…P…W2´−G´とも表せると述べますが、これはここで終わりにしています。第３節で示した詳しい定式をさらに詳しく、次のように表し、総循環の考察に移ります。
　　　　　　　　　　　　

�Dｐ８３〜ｐ８４（新書版）
　「ここでは資本は、関連し合い互いに制約し合う諸転化の一系列、すなわち、一連の諸変態――これらの変態は、一つの総過程のいくつかの一連の諸局面または諸段階を形成する――を経過する一つの価値として、現れる。」（�Dｐ８３）「資本価値がその流通段階の内部でとる両形態は、貨幣資本および商品資本という形態である。生産段階に属する形態は、生産資本という形態である。それの総循環の経過中にこれらの形態を身につけてはまた脱ぎ、それぞれの形態においてその形態に照応する機能を果たす資本は産業資本（原文は傍点*ykb）である。」

�Dp88〜p89
　上段は新書版によるものですが、新版では…
　「ここでは資本は一つの価値として、関連し合い互いに制約し合う一系列の諸転化を経過し、一つの総過程の、それと同数の諸局面または諸段階をなす一連の変態を経過するものとして、現れる。」（�Dp88）「資本価値がその流通段階の内部でとる形態は貨幣資本および商品資本という形態である。生産段階に属するその形態は、生産資本という形態である。総循環の経過中にこれらの形態を身に着けてはまた脱ぎ、それぞれの形態においてその形態に照応する機能を果たす資本は、産業資本（原文は傍点*ykb）である」（�Dp89）
…と、「産業資本」の概念規定がわかりやすく（？）なっています。「産業資本」についていは第一部第４章で初めて先行的に触れられています。【2023/5/10改定・追加】

　もっと分かりやすく言うと、産業資本とはその運動過程内に剰余価値を生産する生産過程を含む資本です。この産業資本が、その流通過程では貨幣資本、商品資本という形態をとり、生産過程では生産資本という形態をとります。ですから産業資本とは、貨幣資本、商品資本、生産資本の上位概念です。

�Dp90
「われわれの例では」からの部分は、まだ第一篇では本格的に論じられない「固定資本」の循環の扱いですが、ここではごく簡単に触れられています。（実は前貸し資本総額に固定資本総額が算入されることが、第三部で剰余価値（率）からの利潤（率）への展開で決定的な問題となりますが【2023/5/10追加】）今のところ、あまり気にするなということです。

�Dp91〜p93
「ところが」からは生産過程から商品資本が出てこない産業資本もあるという話です。交通業や通信業は、場所の移動という生産過程が同時に消費過程であるというわけです。ここで消費されるのは、例えば鉄道業をとってみれば、レールや列車などの生産手段に加え、鉄道業に就業している労働者の労賃と剰余労働すなわち剰余価値です。大事なのは、輸送業が商品を運ぶ場合はこれらが生産的に消費されて運んだ商品の価値に新たに入り込み、個人的な旅行などではこれらの価値は個人的に消費され、価値が移転されないということです。

�Dp93
　マルクスは交通業、通信業の定式はと表しますが、P-G´と実線で結ばれているのは等価交換を表していますので、（剰余価値が省略されている【2021/12/3追加】）矛盾があります。もっと詳しい定式が必要ではないでしょうか。どなたか提案してください。貨幣材料生産業の定式は、ＰーＧ´がP…G´となっただけで、似ています。

ーーp92の「ところで」からの一段落は、大きく発展した
現代のサービス業との関係で大事なので読み上げましょう

　これは非常に大事で、この価値法則を無視して、輸送業を中心とした流通部面の整備を怠ったのが旧ソ連の経済的衰退の要因でもありました。（さらに、商品を物質形態で生み出さない保育、介護、福祉労働などケア労働をどう考えるか、現代社会の大問題です。ykbdataの私見ではケア労働も輸送・通信業と同じように、価値を生み出しながら消費されていると思います。いかがでしょうか。【2021/12/3追加】）

�Dp93
　次は、p89でとりあげた、「自立的な資本諸種類」の比較的詳しい叙述です。「産業資本は剰余価値または剰余生産物の取得だけでなく、それを創造することも同時に資本の機能とする、資本の唯一の定在様式である。」ですから、商業資本や銀行資本は商品形態や貨幣形態をとりえても、剰余価値を生産する生産資本形態をとり得ないというわけです。
　産業資本こそ、生産の資本主義的性格の条件であり、「産業資本が社会的生産を支配する程度に応じて、労働過程の技術と社会的組織が変革され、それと同時に社会の経済的歴史的類型が変革される」。つまり、資本主義の発展段階は産業資本の発展の度合いで決まるよ、ということだと思います。具体的には、単純協業、マニファクチュア、機械制大工業という資本主義的生産の発展を言っているのだと思います。

�Dp93〜p94
　次は以前から存在する商人資本、高利貸し資本が産業資本に従属させられ、産業資本の一形態である商品資本、貨幣資本として機能するようになると言っています。「産業資本以前に…他の諸種類の資本は、産業資本に従属させられ…産業資本が流通部面の内部で身に着けたり脱いだりするさまざまな機能形態の、社会的分業によって自立化され一面的に発展させられた実存様式」だというわけです。（これは第三部の商品取引資本、貨幣取引資本への伏線となっています。【2023/5/10追加】）

　独占資本主義の段階になると、銀行資本こそ、主に生産を支配する形態にゆがんで発展します。「資本論」は自由競争を前提としており、独占資本主義についてはあまり研究されていません。（それはヒルファディングの「金融資本論」を待つ必要がありますが、これはykbdataもまだ読んでいません。）

　ここではたと考えました、銀行資本は生産過程を含まないのか？通信業が生産過程を含むなら、銀行の送金業務は通信業と同様に、「送金」という有用効果を生み出す生産諸手段（ATM、コンピュータ、銀行の建物の一部）と送金業務に携わる労働者の労賃および剰余価値がその場で消費されるのではないか。銀行に剰余価値を生む機能、生産資本としての機能があるのではないかと。その諸価値は「送金手数料」として実現するのではないか、という考えが浮かびました。みなさん、どう思いますか？（第三部で明らかにされますが、銀行で働く労働者はいても、銀行業（利子生み資本）に剰余価値を生む生産資本としての機能はありません。【2023/5/10追加】）

�Dp95〜p98
　「最後に」、資本の循環の特殊な形態としての貨幣資本の循環を、他の特殊な形態すなわち後に研究される商品資本の循環や生産資本の循環と比べると、次のような特徴があるとまとめます。
（１）G…G´は金儲け、すなわち資本主義的生産の推進的動機をもっとも明白に表す。
（２）生産過程は価値増殖のための単なる手段として表れる。
（３）剰余価値ｇが「光きらめく」貨幣形態ではっきり表される。
（４）労働者や資本家の個人的消費は含まれない。【2023/5/11訂正】

�Dp98〜p103
　最後にマルクスは、資本家の禁欲による蓄積という重商主義のお説教に対して皮肉を言って話を結んだ後、線を引いてまた同じような話をし始めます。ここはまともに付き合う必要はないでしょう。貨幣資本の循環が二度三度連続して運動する過程G−W…P…W´−G´･G−W…P…W´−G´･G−W…P…をみると、P…PあるいはW´…W´という循環も見えてくる、それでもG−Wは資本がはじめて循環を始める条件、先行条件として前提される、ということぐらいが分かればいいと思います。

　当時11月11日が大網白里町議選、18日が我孫子市議選、25日が白子町議選と、極めて多忙だったためこの部分は端折って（はしょって）しまいましたが、いくつか大事な点を改めて指摘します。
　のちに研究される生産資本の循環Ｐ…Ｐについてマルクスは、「資本の価格表現は生産諸要素の価格としてのみ、したがって計算貨幣で表現された価値としてのみ現れてくるのであって、帳簿にはこの形式で書き留められる。」と述べていますが、これはたぶん複式簿記の「貸借対照表」のことだと思います。あえて言えば貨幣資本の循環は「損益計算書」で表されるということではないでしょうか。（p100）
　そのあとに新規事業は必ずこの貨幣資本の循環にあるとも言っています。p101では今度は価値増殖過程を見ない「重金主義」も批判されます。【2023/5/11追加】

ーー第１２回「新版『資本論』オンラインゼミ」はここまでです。

　これで第１章は終わります。次は第２章　生産資本の循環です。

2007年11月24日 ykbdata

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