第4節　大部門�Uの内部での転換。必要生活諸手段と奢侈品　�Fp645〜p660

　ここでは、前回の最後に述べたように、マルスクの貨幣の「還流」へのこだわりが、難解さを最高潮にしています。題材は大部門である「消費諸手段生産部門」�Uの中を、中部門「必要生活諸手段生産部門」�Uaおよび「奢侈的消費諸手段生産部門」�Ubに分けて、この中部門のあいだでの価値補填と貨幣流通を難しい言い方で述べ、最後にはこの両中部門の不変資本�Ua(c)と�Ub(c)とが、大部門「生産諸手段生産部門」�Tの可変資本ｖ（労賃）および剰余価値ｍ（資本家の収入）とがどう交換されるのかを述べています。
　結論は分かっているのですが、とにかくその表現が脳がよじれるくらいykbdataには困難でした。前回のアップから７年間も時間が空いたのは、多忙な任務についたということに加え、この難物をどう平易に表現できるものかと、何回かの試行錯誤があったことです。

�Fp645〜p646　「次に…」
　さっそく、マルクスのいうところを見てみましょう。まず前３節、すなわち�T(v+m)＝�Ucのおさらいで、そのなかでまだ未研究の課題として、大部門�T内での不変資本�Tcの再生産を6節で、大部門�U内での可変資本ｖおよび剰余価値ｍの再生産および可変資本（労賃）として投下された貨幣の資本家への還流）を5節で論じるよと予告した後、ここ（4節）では上記の問題（中部門のあいだでの価値補填と貨幣によるその媒介）を扱うよと言っています。

�Fp646〜p648　「年々の…」〜「�Uaには、すでに…」
　ここで述べている大部門�Uのなかの中部門�Uaと�Ubの関係をまとめると下図のようになります。（ここでは不変資本は度外視し、あとで考察します。）

　これで十分なのですが、マルクスはまた、貨幣の動きを難しく説明します。なぜこんなにしつこく論述するのかを考えましたが、「資本論」は論争の書であることだと思います。「商品生産と言っても資本家のための商品生産もあるぞ。資本家はこれを毎年どうやって買うのか」とか言う反論への予防措置のような気がします。仕方ないので、マルクスの「迷宮」に付き合うことにしましょう。

�Fp647　｢第一の項目に関して明らかなのは…｣〜｢…直接に供給されるのである｣(8行目)
　これは上図の�@のことを言っています。中部門�Uaの資本家が�Uaの労働者に支払った貨幣（可変資本400v）は、�Uaの労働者が�Uaの生産物である必要消費諸手段800のうち400を買うことによって、�Uaの資本家へのもとへ直接還流すると言っています。これは何の困難もありません。

�Fp64711行目〜頁末
「ところが、中部門�Ubについては、事情が異なる･･･この中部門に前貸しされた可変資本（�Ubvの還流は*ykb）…�Tvと同じように、媒介されたものでなければならない」とは、第2節で論じた大部門間の交換を示す下図の�Aのようなものだと言っているのです。

�Fp648　「たとえば…」〜「中部門b、奢侈品…」
　この部分はすでに示してある表式について述べています。

�Fp648　「�Ubの労働者たちは…」〜「�Uaには、すでに…」
　簡単な方の問題を「�Ubの労働者たちは･･･�Ubの資本家たちにその可変資本が貨幣形態で還流する」言っているのは、再掲の次図の�A100の交換に続いて�Uaの資本家が100の奢侈品を買い、それが貨幣として�Ubの資本家に還流するということです。
「�Uaには、すでに」に続く3行は同じことの繰り返しです。

�Fp648〜p649　「いま、�Uaの資本家たちのもとでも…」〜｢(�Ua)mが受け取る…」
　問題はこの部分です。�Uaおよび�Ubの資本家たちの「どちらもそれぞれ5分の3を必要生活諸手段に、5分の2を奢侈品に支出が分割される比率が同一であると前提すれば」として、�Uaの資本家は必要生活諸手段に240と奢侈品に160を（上図赤線）、�Ubの資本家はそれぞれ60と40を投下（支出）する（上図緑線）と言っています。
　以上からすると、�Uaの必要消費諸手段800は�Uaの労働者が消費する400と、�Ubの労働者が消費する100、さらに�Uaの資本家が消費する240を引くと、あと60が残り、前述の「�A100の交換に続いて�Uaの資本家が100の奢侈品を買い」と言うのが不完全な表現となります。
　この辺は、前3節に続く貨幣の流れの無理が出てきます。マルクスは突然、還流してきた100以外に資本家の支出を言い始めます。（p649の5行目）「さらに必要な生活諸手段の形の存在する〔残りの〕60は、奢侈品の形態で存在する(�Ub)60mと交換されるというのです。（上図の�B）まだ信用論が出てこないのに、媒介する貨幣の出どころがありません。

�Fp651　「aとbについて…」
　すこし飛ばして、マルクスも事の複雑さを考えて、以上の価値補填関係を次のように詳細な表式しています。訳注にあるように、線の上にあるv、mは各中部門も生産物価値の構成部分を表し、線の下はその生産物価値が各中部門の投下可変資本（労賃）と資本家の支出（剰余価値）によって購買されること、すなわち商品価値が貨幣に実現することを表しています。
　ykbdataなら、さらにその下の表式にします。今後これを使います。

�Fp649　｢（一）…」
　戻って、マルクスが貨幣による購買と価値補填の関係を追跡する様子を、上図に書き加えながらたどりましょう。
（一）は中部門�Uaの資本家が支払った労賃400v(a)によって、�Uaの労働者が自分たちで生産した必要消費諸手段800のうち400vで買って消費し、資本家には支払った労賃分の貨幣400が還流します。これは下表の赤い（一）に相当します。

　これは価値補填だけを示した前図（下）の�@にあたります。

�Fp649〜p650　｢（二）…」
（二）は中部門�Ubの資本家が支払った労賃100によって、�Ubの労働者が�Ua部門の残りの必要生活諸手段400のうち100を買します。これで得た貨幣100で�Uaの資本家は�Ubの奢侈品うち100v(b)分を買います。これで�Ubの資本家には可変資本（労賃）に投下した100が還流します。これは下表の赤い（二）に相当し、価値補填だけを示した上図の�Aにあたります。

（二）の後半部分（　）内はの下図の大部門間の交換�Aを言っているのですが、中段の�Aが表している�T(1000v+1000m)と交換される消費諸手段�U3000のうちの2000は必需品と奢侈品に分かれているし、下段の�Aが表す�U2000cの更新も必需品の生産手段と奢侈品の生産手段に分かれている、と言っています。これはあとで宮川彰氏の解説を紹介します。

�Fp650〜p651　｢（三）…」〜「(�Ub)mは…60+40=100m(�Ub)である。」
（三）は資本家の奢侈品への支出と生活必需品への支出との比が2:3なのだから、�Uaの資本家の収入である400mのうち奢侈品に対する支出はすでに（二）で支出した100に加えて60の合わせて160（必要生活諸手段には240）、�Ubの資本家の支出は奢侈品40（必要生活諸手段には60）となります。

�Fp651の2行目〜4行目
「この部門〔�Ub〕は、この後者の40（�Ubの資本家の奢侈品支出*ykb）をそれ自身の生産物のうちから消費し（その〔�Ub部門の*ykb〕剰余価値の2/5）、〔必要〕生活諸手段のための60を、�Ubの剰余生産物のうちの60を60m(a)（�Ua部門の剰余生産物60*ykb）と交換することによって受け取る。」は下表の赤い(三)に相当し、価値補填だけを示した下図の下段の�B60の中部門間の交換と、40の部門内の交換とにあたります。

　これまでのマルクスの追跡で、まだ一つだけ残っています。どこでしょうか…。簡単ですが答えはこちらです。

�F651　「こうして…」〜「aとbについて…次のようになる」はすでに価値補填を論じる前に触れて表式も示しています。

　いずれにせよ、中部門�Ua(2/5ｍ)=160と�Ub(v+3/5m)=160が交換されますので、不破氏は�Ua(2/5ｍ)＝�Ub(v+3/5m)が単純再生産の均衡条件だと言っています。しかし、これは資本家が必要消費諸手段に5分の3を、奢侈品に5分の2を支出するという前提があるからです。これは因果が逆です。労働者が消費した後には必要生活諸手段が300、奢侈品が200しか残っていないので、必然的に資本家の支出割合が3:2となります。

　ykbdataは何回か読み込んでそのことに気づき、資本家が必要消費諸手段に5分の1を、奢侈品に5分の4を支出する場合（1:4）の表式をつくってみました。それが下図です。ここでは�Ua(4/5ｍ)240＝�Ub(v+1/5m)240となります。したがって一般的な均衡条件は�Ua(θｍ)＝�Ub(v+(1ｰθ)m)となります。（θは見かけ上の資本家の支出の奢侈品の割合、もっと本質的には中部門�Uaと�Ubの生産物価値の割合から必然的に決まる割合で、ykbdataはこれを簡単のために奢侈率と名づけます）元の図と比べてみてください。
　上下の表式で�Uaと�Ubを合わせた500v＋500mは変わらないのに、上の表式では�Uaと�Ubの労働者が合わせて500を消費したあとには必需品100と奢侈品400しか残っていません。だから資本家の支出は1:4になります。下の元の表式では、必需品300と奢侈品200しか残っていませんので、資本家の支出は必然的に3:2となります。

�Fp652〜p653　「説明を簡単にするために･･･」〜「これに対応して…」
　次にマルクスが持ち出すのは、（二）の後半部分で簡単にすませた問題で、第3節では大部門間の交換である�T(�D+ｍ)＝�Ucが大部門�Tと大部門�Uの間で一括して交換されましたが、ここでは大部門�Uが下図のように不変資本も含めaおよびbに分割されます。

�Fp652　「したがって…」
　生産諸手段2000�T(v+m)のうち、1600は必需品の生産諸手段(800v+800m)�Tに、400は奢侈品の生産諸手段(200v+200m)�Tに分れます。

　マルクスは詳述していませんが、これまでに解明された価値補填関係と貨幣の動きをykbdataなりにたどると下図になります。
　始点は賃金の支払いです。 �@まず�T(1000v)に投下された賃金で�Tの労働者は�Uaの生産物（必要消費諸手段）2400のうち1000を買い、
�Aそれで得た1000で�Uaの資本家は�Tの生産物（生産諸手段）6000のうち1000を買って、次の再生産のために必要な不変資本�Ua(1600)のうちの1000とする。
�B�Tの資本家はその収入（剰余価値）�T(1000m)のうちの5分3の600を�Uaの生産物（必要消費諸手段）600を買い、
�C�Uaの資本家は手もとに入ったこの600で�Tの生産物（生産諸手段）の600を買って、再生産のための不変資本600とする。
　こうして�Uaの不変資本1600が揃う。この時点で�Tの生産物（生産諸手段）の残りは4400となる。

　次に�Ubの不変資本�Ub(400c)の補填については、
�D�Tの資本家が�T(1000m)のうち上述の600を除く400を�Ubの奢侈的消費手段に支出し、
�E�Ubの資本家の手もとに入った400で�Ubの資本家は�Tの生産物（生産諸手段）の残りの4400のうち400を買い、�Ubの再生産のための不変資本を補填する。
　最後に、�Tの残りの生産物（生産諸手段）4000は�Tの内部の交換（下図の�B）で�Tの次の再生産のための固定資本�T(4000c)が補填される。これで全部終わりました。

�Fp652〜p653　「したがって…」「本来の労働手段の…」
　しかしマルクスは別の視点で拘泥します。マルクスは「本来の労働手段のかなりの部分ばかりでなく、原料や補助材料などのかなりの部分も、双方の中部門にとって同様のものである」すなわち形態の区別は、�T(v+m)の価値転換がどんな割合になるかということと関係ない、と言っています。
　さらに、上記の（p563の1行目)�Tの資本家が投下した可変資本1000vのうち、必需品生産手段の価値にはいり込む800vも、奢侈品生産手段の価値にはいり込む200vも、それがどんな形態（同じような形態）の生産諸手段として�Uの必需品と交換されようが無関係に、その資本比率に応じて�Tに復帰する、と言っています。
　他方（p653の4行目から）、�Tの労働者の生み出した剰余価値1000�Tmに相当する生産手段はそれがどんな形態の生産諸手段かとは無関係に、必需品600�Uaと奢侈品400�Ubと交換されると言っています。
　したがって（p653の7行目）と上記の�Uaの不変資本を補填する表式を示します。
　これをykbdata流に表式にしたのが下図です。

　宮川彰氏の「『資本論』第２・３巻を読む（��ｐ２２２）」の図解（ykbdataが少し編集）は参考になりました。

　とんでもなく錯綜していますので、これは図解なしには理解できません。マルクスは図解なしで考察したのでしょうか。だとしたらやっぱりマルクスは天才です。

�Fp653〜p655　「ここでは…」｢（一）…」｢（二）…」
　ここからは「まとめ」に入りつつ、また可変資本（労賃）が、支出した資本家の手もとに「還流」するころをくりかえします。
（一）は単純再生産における大部門間の均衡条件�T(v+m)＝�Ucを再確認します。
（二）は、前出の下図の、必要消費手段生産部門�Uaの生産物800のうち剰余生産物(�Ua)m400に相当する部分は、�Uaの資本家の生活必需品240および�Ubの資本家の生活必需品60と�Ubの労働者の生活必需品100を含む、すなわち
　　　(�Ua)m400＝(�Ua)m(1-θ)240+�Ubm(1-θ)60+(�Ub)v100
　ただし、θは前述したように見かけ上の資本家全体の支出の奢侈品の割合。もっと本質的には中部門�Uaと�Ubの生産物価値の割合から必然的に決まる割合です。
　ですから、当然(�Ua)m400＞(�Ub)v100となります。（下図参照）

　改めてykbdata的にまとめると、大部門�Tと大部門�Uの交換の平衡条件は
　　　�Tc(v+m)＝�Uc
　中部門�Uaと�Ubとの交換の平衡条件は
　　　(�Ua)m＝(�Ua)m(1-θ)+(�Ub)m(1-θ)+(�Ub)v　だたしθは資本家の奢侈率
　不破さん流に簡略化すると
　　　(�Ua)(θｍ)＝(�Ub)(v+(1ｰθ)m)
になりますが、これだと数式はスッキリしていますが補填関係が直感的にわかりません。 　それに、あえて言えば、マルクスの
　　　(�Ua)m＞(�Ub)v　では「平衡条件」とは言えず、一見「不均衡条件」です。
　(1-θ)は資本家の支出に占める必需品の割合で、これを必需率η（イータ）とすれば超簡単になります。すなわち、
　　(�Ua)m＝(�Ua)ηm+(�Ub)ηm+(�Ub)v　または
　　(�Ua)θm＝(�Ub)(v+ηm)　または
　　(�Ua)ηm＝(�Ua)m−(�Ub)(v+ηm)
となり補填関係を直感的に表しています。必需品部門�Uaの資本家の奢侈品支出θmは、奢侈品部門�Ubの労働者支出v（すべて必需品）と資本家の必需品支出ηmとに交換されます。必需品部門�Uaの資本家の必需品支出ηmは、必需品全体の剰余価値分(�Ua)mから奢侈品部門の労働者支出v（すべて必需品）と資本家の必需品支出ηmが交換された残りです。

　ここで、奢侈品部門の可変資本、すなわち労働者の賃金と支出を中心に置くとどうなるでしょうか。上の最初の式
　　(�Ua)m＝(�Ua)ηm+(�Ub)ηm+(�Ub)v
の両辺から(�Ua)mηと(�Ub)mηを引くと
　　(�Ua)m−(�Ua)mη−(�Ub)ηm＝(�Ub)v
　左辺の(�Ua)m−(�Ua)mηを(�Ua)θmとして左右を入れ替えると
　　(�Ub)v＝(�Ua)θm−(�Ub)ηm
となり算術も100=160-60で合っています。
　資本家の必需率を奢侈率で表すとη＝(1-θ）ですから
　　(�Ub)v＝(�Ua)θm−(�Ub)(1-θ)m
となりますので、のちに言及されるように、これは(�Ua)m＞(�Ub)vとともに、｢労働者階級のうち�Ubで就業する部分の生存と再生産…が、資本家階級の浪費、彼らの剰余価値のかなりの部分の奢侈品への転換のよって条件づけられている」（p658）ことを直感的に表しています。以後の恐慌論の先走りとの関係でも重要です。

�Fp655の6行目〜11行目　「言うまでもなく…」〜「おいてのみである。」
　マルクスは結論を出した後に、これが成立するのは「貨幣資本を信用を通じてよそから調達しなっ限りにおいてのみ」、「生産の規模と価値諸関係とが不変のままである限りにおいてのみ」、「諸関係が対外貿易によって変更されない限りにおいてのみ」であると、平衡条件は攪乱されるのが普通であることを逆説的に表現します。

�Fp655〜p656　「さて、もしアダムスミス流に…」
　この部分はＡ・スミス批判ですが、解説は省略します。

�Fp656〜p657　「先に確認された…」
　個々の資本家の奢侈品に対する支出する割合は様々だが、全体とすれば一定の割合になると、当然のことをわざわざ言っています。

�Fp657〜p658　｢(�Ub)vが(�Ua)mのうちの…」
　さて、タテ線以降は恐慌の進行過程を説明している興味深いところで、全体的には過少消費恐慌論を批判しています。不破氏は例によって書かれなかったマルクスの「恐慌の運動論」という視点で説明しています。
　内容を読み解いてみましょう。最初の部分はすでに紹介した「労働者階級のうち�Ubで就業する部分の生存と再生産…が、資本家階級の奢侈的浪費…によって条件づけられるようになる」というマルクスなりの表現です。こ次から恐慌発生直後の労働者の運命を述べています。

�Fp658〜p659　「どの恐慌も…」
　まず、「どの恐慌も、奢侈品消費を一時的に減少させ…奢侈品労働者を街頭に投げ出すが、他方ではまさにそうすることによって必要消費諸手段の販売も停滞させ」ると述べています。これはこれまでの論議からすると、この順番で恐慌は進行します。

　ここで思いつきました。現在（2020年4月）進行している新型コロナウイルス危機のもとで、まず失業の危機にさらされているのは観光業、芸術・芸能にかかわる労働者だということを。もちろん、この分野が資本家だけの奢侈的消費ではなく、今や労働者も広く支出する分野となっていますが、まず節約されるのは生活必需品以外のこれらの支出です。しかしこれはやがて経済全体へ影響することは火を見るより明らかです。
（現在の最高の奢侈品の一つである「プライベートジェット」も売り上げが激減した話も聞きました。【2024/4/19追加】）

�Fp658〜p659　「繁栄期…」〜「恐慌は支払い能力ある…」
　次にマルクスは、繁栄期には必要生活手段だけでなく、この奢侈的消費が労働者も一部加わって増大し、物価の上昇を呼び起こすと言っています。不破氏はこのことをまた例の恐慌の運動論との関係で、第二篇第16章の覚書（�Ep501〜p502）を紹介します。恐慌は過少消費ではなく労賃が上昇する繁栄期に準備されると繰り返します。（この現象に惑わされて、恐慌は賃金の高騰が原因だという経済学者もいました。日本の「失われた30年」という状況からも、現在では実質賃金の停滞・下落こそ経済成長ができない原因だと広く認識されています。【2024/4/23追加】）

�Fp660　注（四六）
　エンゲルスがここで名前をあげているロートベルトゥスの過少消費恐慌論について宮川氏が面白く書いているので、見てみましょう。（「『資本論』第２・３巻を読む」、ｐ２２７〜２３０）
　古典経済学者たちの中にも結構あった過少消費恐慌論の理論的源流は、「人口論」で有名なマルサスでした。マルサスは旧支配勢力である地主階級の立場に立って新興ブルジョアジーと鋭く対立し、資本主義的生産のｖ＋ｍの過剰生産と過少消費を批判し、ケネーがしたように消費だけする国王や地主階級の存在を擁護しました。この過少消費説を受け継いで、労働者の立場に立って主張したのがロートベルトゥスです。
　実は、第二部の「序言」で、すでにロートベルトゥスおよびＡ・スミスの剰余価値論への批判が詳しく展開されていますので、この節のマルクスの最後の言葉「実際にはもっと錯綜した形で現れる。なぜなら、獲物資本家の剰余価値の分け前への関与者たちが、資本家から独立した消費者として登場するからである」にかかわるものでもあり、参考にしてください。

　第４節が終わりました。マルクスの体調とエンゲルスの編集の問題で、超難関となってしまった再生産論の基本点を突破しました。6年半のブランクで、ykbdataの頭脳の働きが衰え、読み解くのが超大変でした。時には「こんなの意味あるの？」と閉口したこともありましたが、何とか乗り越えられて本当に良かった。
　次は、この6年半のようなことにはならないと思いますが、第5節以降がいつになるのか分かりません。例によって気長にお待ちください。（読み直すと、理解するには図解が必要だと感じ、長い時間をかけて�U部門内の交換の3つ＋1の図を追加し、さらに【追加】した部分など新たな発見がありました。【2024/4/18追加】）

２０２０年４月２９日ｙｋｂｄａｔａ（2024年4月23日改定）