◆◆◆｢資本論｣の研究◆◆◆
｜トップページ ｜第２部の目次 ｜前のページ ｜次のページ ｜ykbdataのメールアドレス｜＃０４７：第二部第２１章 蓄積と拡大再生産（その２）
第２節 大部門Ⅱにおける蓄積
マルクスが最初に言っているのは、Ⅰが蓄積をするとⅡへの不変資本の供給が不足し、Ⅱの商品が売れ残るので、過剰生産となり単純再生産もさまたげると、困難をあげているのです。（８１３～８１４）
その後も繰り返して、拡大再生産表式へのヒントとして次のようにまとめています。
すなわち、大生産部門Ⅰでの仮想的追加貨幣資本の形成（それゆえⅡの立場から見れば過少消費）。大部門Ⅱでの、生産資本に再転化されえない（Ⅰの生産手段と交換できない*ykb）商品在庫の固定（したがってⅡでの相対的過剰生産）。Ⅰでの過剰な貨幣資本とⅡでの再生産における不足。
これを不破さんはマルクスの拡大再生産論への初回の挑戦の行き詰まりと捉えていますが、ykbdataはそう思いません。これは単純再生表式の延長線ではダメだ、これを前提にした再生産表式にしないといけないと、マルクスは気づいたのだと思います。
例の仕切り線のあと、このことを表式で再現しています。解説付きで示すと
マルクスは分かっていて「蓄積が消費を犠牲にして行われる」ことは資本主義的生産ではありえないこと（ｐ８１５）、「この困難を避けるため」には（商人資本はまだ登場していないのだから）Ⅱでは商品在庫（消費諸手段）を持つことになる（ｐ８１７）、と第３節のヒントを並べ立てます。
第３節 表式による蓄積の叙述
ここからいよいよ表式による第１回目の拡大再生産のシミュレーションです。マルクスはここでは解決ににたどり着きません。スタートの表式として
Ⅰ ４０００ｃ ＋ １０００ｖ ＋ １０００ｍ ＝ ６０００
Ⅱ １５００ｃ ＋ ３７６ｖ ＋ ３７６ｍ ＝ ２２５２
を示します。（ｐ８１９）
エンゲルスの指摘のように、マルクスは算術に弱いので、１８８の５分の１を４８とするなど、しょっちゅう計算を間違えます。それを商売をやっていたエンゲルスが、商人的正確さで訂正して回ります。しかしいちいち訂正するとややこしいので、マルクスの間違えた数字のままで話を進めます。
大部門Ⅰでも大部門Ⅱでも蓄積率を５０％（剰余価値の半分を資本に追加）とすると
Ⅰでは４００が不変資本に、１００が可変資本に追加する
同様にⅡでは１４０が不変資本に、 ４８が可変資本に追加する（正しくは３８）
としたいのですが、マルクスは突然、「われわれはここで一つの新しい問題にぶつかる」として、Ⅱの追加資本１４０（正しくは１５０）が貨幣化できないと言い出します。たしかに１４０（ただしくは１５０）の消費諸手段がⅠに売れないのです。（ｐ８２２）
マルクスの貨幣の動き（よく「貨幣による媒介」と言います）に対するこだわりはこれまでも行き過ぎというくらいでしたが、私はここではこの表式ではうまくいかないと判断して、口実を付けて「自爆」しているのだと思います。そうでなければ、マルクスの大間違いです。この辺のykbdataの理解はどの研究者とも違います。（ｐ８２２～８２５）
１ 第一例（ｐ８２７）
ykbdataがなぜそう思うか。二つの理由が陳腐すぎるからです。さらに、同じ第八草稿なのに、前回はうまくいかなかったが今回はこう修正してという説明なしに、その次にすぐ正解（ｐ８２７）が出てくるからです。マルクスが、これはうまく行かないなと思ったであろう本当の理由は、ykbdataの憶測では次の赤字の部分で、実は拡大再生産表式のカギの１つを握っています。（数字はエンゲルスが訂正した数字を使っています）
Ⅰv＋Ⅰm/2の１５００とⅡｖ＋Ⅱm/2の５６４を消費しても１８８が、Ⅱの４８（ただしくは３８で、Ⅱ自身が翌年消費する在庫）を度外視すると１４０（正しくは１５０。上表式の「および翌年用在庫１００＋消費手段が５０余る！＝１５０）が売れません。ykbdataの考えでは、商品在庫を仮定しても５０が完全に売れ残ります。しかしこれまでに、Ⅰの過少消費とⅡの商品在庫について考察していましたから、この難問をマルクスは難なく解決します。恒常的過剰生産です。第一例はそれを取り入れて見事に解決します。マルクスは知識だけでなく、インスピレーションが鋭い！やはり天才です。次のykbdataの解説付き第一例の表式をご覧ください。
上記のシミュレーションを５年目までエクセルで計算したのが次の表です。マルクスの再生産進行表とピッタリ一致します。（ｐ８３４）
しかし、なぜマルクスは翌年度用の労働者向けの商品在庫（消費諸手段）などということを考え出したのだろう。（ｐ８２８、ｐ８１７でも触れている）つじつま合わせだろうかなどと、考えに考え次の結論に達しました。
「資本論」に登場する労働者はその日暮らしで毎日のように市場に買い物に行きます。資本家のように消費諸手段の備蓄を持てません。つまり生産の結果としての消費諸手段では間に合わないのです。つまり、可変資本の翌年度への追加に相当する消費諸手段は、翌年度の生産の結果では間に合わないのです。翌年度に労働者が消費する追加商品は「商品在庫」として事前に確保しておかなければ、労働者は労働力の繰り返しの回復ができないのです。素材的にはジャガイモやタバコ、火酒（「イギリスにおける労働者階級の状態」に出てきます。労働者用だからブランデーではなくジンやバーボンでしょう）が考えられます。
直感的にはこうなのですが、価値補填の原則から考えると当然の事態です。単純再生産ではⅠの資本家が手に入れる剰余価値はすべて消費諸手段に支出されますが、ここでは剰余価値１０００ｍのうち半分の５００を消費しないで、不変資本に４００を、可変資本に１００を追加します。この追加不変資本４００はⅠの内部で現物形態で補填されます。
一方、可変資本１００はⅡから消費諸手段の現物形態で補填（翌年度労働者が消費）されるしかありません。同様にⅡの資本家の追加可変資本５０もⅡから消費諸手段の現物形態で補填翌年度労働者が消費）されます。Ⅱの追加不変資本１００はもちろんⅠから現物補填されます。この辺のことが、ｐ８３６～８３７で述べられています。
なお、社会的生産年を1年としましたが、例えば食用の鶏の卵のように、商品によっては回転が速く、ごく短い生産年となっても事態は変わりません。（この場合、鶏は固定資本の扱いになります）
以上がykbdata流の拡大再生産論ですが、ここでマルクスの「蒙昧遊戯」に少し付き合いましょう。
５００Ⅰｍのうち４００が不変資本に、１００は可変資本に転化する･･･とⅠでは次のようになる。
４４００ｃ＋１０００ｖ＋１００ｍ（ｐ８２７～８２８）
これは翌生産年に向けて準備されるということで、直ちに機能するものではありません。こうした時系列的説明がないのが難解になっている要因の一つです。
Ⅱの側では、蓄積の目的でⅠから１００ｍ（生産諸手段として実存する）を買い、これがいまやⅡの追加不変資本を形成するが、一方、Ⅱが支払う貨幣１００は、Ⅰの追加可変資本の貨幣形態に転化される。そこで、Ⅰにとっては資本は、４４００ｃ＋１１００ｖ（後者は貨幣）＝５５００となる。
４４００ｃ＋１１００ｍ＝５５００は翌生産年に向けた資本です。これは時系列的に混乱させられます。ykbdataの第一例の解説のように、Ⅰの翌年に向けての追加可変資本１００に相当する、Ⅱのための翌年に向けての追加の生産諸手段１００が残るので、Ⅱはこの１００を翌年に向けた追加不変資本にするしかないのです。
なお、マルクスが、Ⅰが追加可変資本に回した１００ｍがⅡの追加した不変資本１００ｃを貨幣化する、と言っているのは誤りのように思われます。Ⅰが追加した１００ｍが１００ｖとなって貨幣化するのは翌年の話です。１年目の１００ｍと１００ｃの一致は偶然で、２年目は１１０ｍと１６０ｃ、３年目が１２１ｍと１７６ｃと一致しなくなります。仮想貨幣資本についてはすでにその源泉はⅠについてもⅡについても蓄蔵貨幣だと考察済みです。
いまやⅡが不変資本として所有するのは、１６００ｃである。Ⅱはこれを動作させるためには、さらに貨幣で５０ｖを新たにな労働力の購入のための追加しなければならないのであり、その結果、Ⅱの可変資本は７５０から８００に増大する。
これは１６００の不変資本を機能させるために５０追加可変資本が必要であり、この貨幣はⅡの資本家の「節欲」、つまりⅠｍ７５０のうち５０が消費に支出されず回される、という事を言っています。それを次のように説明しています。
Ⅱの不変資本と可変資本とのこの拡張の合計１５０は、Ⅱの剰余価値から賄われる。したがって７５０Ⅱｍのうち６００ｍだけがⅡの資本家たちの消費元本として残り、彼らの生産物はいまや次のように配分される
Ⅱ １６００ｃ＋８００ｖ＋６００ｍ（消費元本）＝３０００（p828）
しかしこれは翌生産年に向けて仮想貨幣資本が用意されるということで、６００ｍの消費は本生産年のこと、１６００ｃと８００ｖは翌生産年に機能するのです。この辺の説明抜きの叙述になっています。数字のツジツマはあっているのでふんふんと読み通してしまいがちですが、その経済学的意味と資本の時系列的な運動も考えるべきではないでしょうか。
消費諸手段として生産された１５０Ⅰｍ
これも１５０Ⅰｍが１００ｃ＋５０ｍに転換されるのは本生産年末までで、それが労働者の消費にはいり込むのは翌生産年のことです。
Ⅱ
ようする本生産年に売れる（消費される）分よりも１５０だけ多く生産されなければならない、という事。なぜかというと
拡大された規模での再生産が現実に開始されれば、Ⅰの可変貨幣資本１００がⅠの労働者の手を経てⅡに還流する。これに反し、Ⅱは商品在庫での１００ｍをⅠに引き渡し、同時に商品在庫での５０〔ｍ〕をⅡ自身の労働者階級に引き渡す。
これも引き渡すのは翌生産年であり、翌生産年の消費増分のためにⅡは商品在庫を持つという事です。その在庫ができるのもⅡでの１５０の蓄積によるものです。つまりⅡの１００ｃ追加がⅠの労働者の翌年の消費増分に対応する商品在庫となり、Ⅱの５０ｖ追加はⅡの労働者の翌年の消費増分に対応する商品在庫となる、という事で偶然ではなく、必然です。
ｐ８２９ではいろいろ表式を並べますが、要するに翌生産年（拡大再生産１年目）の表式は
Ⅰ ４４００ｃ＋１１００ｖ＋１１００ｍ＝６６００
Ⅱ １６００ｃ＋ ８００ｖ＋ ８００ｍ＝３２００
になるという事です。
次は拡大再生産２年目に向け、１１００ｍのうち半分の５５０が蓄積されるが、その前に１１００ｖと５５０ｍがⅡの商品を消費するので１６００ｃとの転換だけでは５０足りないがこれはⅡｍから追加されるといいます。追加された５０ｃを機能させるために２５ｖがさらにⅡｍから追加されます。
話を元に戻して、５５０ｍは４４０ｃと１１０ｖに分けられ、この１１０も結局Ⅱｍから汲み出される。Ⅱがこの分を不変資本に転化すればⅡはさらに５５の可変資本を追加しなければならずこれもⅡｍから調達され、結局Ⅱは８００ｍから合わせて５０ｃ、２５ｖ、１１０ｃ、５５ｖの合わせて２４０を差し引いた５６０を消費することになり、拡大再生産２年目に向けての資本構成は
Ⅰ (4400c+440c)+(1100v+110v)=4840c+1210v
Ⅱ (1600c+50c+110c)+（800v+25v+55v）=1760c+880v
となると述べています。（ｐ８３１）
これを直感的に分かりやすく経済学的意味を明確にして説明すると以下です。
本年度のⅠの資本家の消費するⅡの商品の不足分５０をⅡの資本家が自分達が消費せずにⅠの資本家に回し、余った貨幣資本を翌年度のⅡの不変資本に追加する。翌年に向けてのこの追加不変資本５０を機能させるために、Ⅱは２５の剰余価値分の商品を消費しないで貨幣２５を確保し、その分の商品が余り翌年に向けての商品在庫となる。
翌年度に向けてのⅠの追加可変資本１１０（翌年度に消費に回る）が本年度のⅡの剰余価値から汲み出される。つまりⅡの資本家が本年"節欲″して消費しない商品１１０が来年のⅠの消費にに振り向け、商品在庫となる。その分Ⅱは余った貨幣１１０を翌年に向けて追加不変資本に回さなければならない.
その翌年に向けての不変資本１１０を機能させるめにⅡの本年の剰余価値から可変資本５５を汲み出す。つまりⅡの資本家がさらに本年"節欲″して消費しない商品５５が余り、翌年のⅡの消費に向けての商品在庫となる。これでⅡの翌年向けの商品在庫は２５＋５５＝８０となる。
数字のツジツマは合いますが、時系列が錯綜する表現になっています。ykbdataの解説付き表式なら簡単で直感的にも理解できます。
マルクスの「蒙昧遊戯」へのお付き合いはこれで終わりにします。もっと付き合いたい人はご自由に。
次の「事態が正常に進行するためには、Ⅱにおける蓄積がⅠにおけるよりも急速に遂行されなければならない」はマルクスの勘違いをエンゲルスが誤りまで発展させてしまったものと不破さんは解説しています。（「読む」⑤、ｐ１４３）
２ 第二例
第一例では、発展した資本主義生産としてはⅡの資本の構成比が２：１で低すぎる仮定でした。第二例ではこれを修正し、ⅠもⅡも資本の構成比が５：１の仮定し、Ⅰの資本家の蓄積率は第一例と同じ５０％でシミュレーションを開始します。すなわち、
Ⅰ ５０００ｃ ＋ １０００ｖ ＋ １０００ｍ ＝ ７０００
Ⅱ １４３０ｃ ＋ ２８５ｖ ＋ ２８５ｍ ＝ ２０００
を示します。エンゲルスはⅡについて１４２５ｃ＋２８５ｖ＋２８５ｍ＝１９９５が正しいと指摘します。（ｐ８３５）
第二例では、第一例のように計算するのが精いっぱいの状態から、シミュレーションしながらあれこれに思いを巡らします。例えば、
1,500Ⅰ（ｖ＋1/2ｍ）と1,500Ⅱｃとの転換は単純再生産過程の一過程であり、その限りではかたづいている。けれども、ここでなお若干の独自性
これは第一例でのykbdataの説明で明かです。
それに続く説明は難解になっていますが、ようするに第一例の末尾でykbdataが論じたことを、余裕ができたのでやっと出してきたわけです。第一例では、「Ⅱは商品在庫での100ｍをⅠに引き渡し、同時に商品在庫での50〔ｍ〕をⅡ自身の労働者階級に引き渡す」（ｐ８２８）と述べただけですが、ここでは、だからⅠ(ｖ+ｍ)＞Ⅱｃだと、拡大再生産の条件として示します。マルクスが計算した再生産３年目までの進行表を示します。最下位桁の数字がほんの少し違うのはマルクスの出発点の計算ミスのためです。
突然、次のまで雑誌「ザ・ネイション」の話になります。マルクスはちょっと頭の休憩を取っているだけで、ここは読み飛ばしてもいいです。内容を一言で言えば、資本家たちは、扇動家（マルクス達）は労働時間の短縮を要求するだけで、労働者の精神的道徳的改善を妨げていると言うが、労働時間の短縮こそ労働者の精神的道徳的改善につながるんだと言いたいのだと思います。でも皮肉だけで終わってます。（ｐ８３７～８４０）
例の縦線（草稿では横線）のあとも
このように、ⅠがⅡの追加不変資本（現物形態＝生産諸手段*ykb）を自分の（Ⅰの*ykb）剰余生産物から提供しなければならないように、それと同じ意味で、Ⅱは、Ⅰのために追加可変資本（の現物形態＝消費諸手段*ykb）を提供する。（ｐ８４０）
と、「ザ・ネイションズ」の前に論じていたことの繰り返しで、拡大再生産がスムーズに進む条件を明示しようとしますが、うまくいきません。不破さんが整理して（「読む」⑤ｐ１４６）にまとめたものをykbdataが数式にしたのが次です。
Ⅰ（ｖ＋ｍ）－Ⅰ⊿ｃ＝Ⅱｃ＋Ⅱ⊿ｃ （⊿ｃは追加不変資本）
これに第一例の拡大再生産１年目の数字を当てはめると
２２００－４４０＝１６００＋１６０＝１７６０
となります。
ykbdataの結論が再確認された
これは何を意味するかというと、単純再生産ならばⅠが本生産年に生産し、翌生産年のためにⅡ引き渡す生産諸手段はⅠ（ｖ＋ｍ）２２００の全部だが、拡大再生産ではそこからⅠの追加不変資本を差し引いたⅠ（ｖ＋ｍ）－Ⅰ⊿ｃ＝１７６０になり、これが当然、翌生産年のⅡの拡大された不変資本となるという事です。この均衡条件は、当初ykbdataが主張したように拡大再生産のカギで（下図の斜めの線がこのことを示す）、マルクスも結論として言おうとして不十分で、不破さんが整理してくれました。しかし、これ、計画経済でしかうまく行かないような均衡条件じゃないでしょうか。
３ 蓄積にあたってのⅡｃの転換（ｐ８４５）
見出しはエンゲルスが勝手につけたので、気にしないでください。ここでは
（１）Ⅰ（ｖ＋1/2ｍ）＝Ⅱｃ場合、第一例の出発表式。
（２）Ⅰ（ｖ＋1/2ｍ）＞Ⅱｃ場合、（１）以外。
（３）Ⅰ（ｖ＋1/2ｍ）＜Ⅱｃ場合、意味がないと思います。
さて最後に、これまで5割としていたⅠの蓄積率を一般化、すなわちⅠの資本家の消費をｍ／ｘとして均衡(?)条件を次のように一般化します。すなわち
Ⅰ（ｖ＋ｍ／ｘ）＜Ⅱ（ｃ＋ｍ）
この項の最後は固定的不変資本の摩滅分とその積立は正確に記述してないとのべ、俺は忘れてないよと言うわけです。
第４節 補 遺（ｐ８４９）
ここではこれまで数字のツジツマ合わせの感のあった拡大再生産におけるⅠとⅡのそれぞれの蓄積（消費せずに追加貨幣資本に転化）がそれぞれにどう関連するか、端的に叙述しています。
まず最初に、例の貨幣へのこだわりから、「Ⅱにとっての本源的な貨幣源泉はⅠ(Ⅰｇ*ykb)（ｖ＋ｍ）とⅡｃの転換であると述べ、拡大再生産のこの関係がどうなるか、叙述しています。＃０４４：第三篇２０章 単純再生産 第１２節 貨幣材料の再生産で示したykbdataの金再生産表式を見ながら、読み解きましょう。
金生産者が剰余価値を積み立てるか、またそれを生産諸手段Ⅰに転化して自分の生産を拡張する限りでのみ、彼のｖ＋ｍはⅡにはいり込まない。他方、金生産者自身の側での貨幣の蓄積が、結局、拡大再生産に導く限りでは、金生産〔者〕の剰余価値のうち収入としては支出されない一部分が、金生産者の追加可変資本としてⅡにはいり込み,そこで新たな貨幣蓄蔵の形成を促すか、または、Ⅰに直接にふたたび売ることなしにⅠから買うための新たな手段を与える。
これはマルクスらしい「蒙昧遊戯」です。Ⅰｇの蓄積が結局はⅡの蓄積を促すが、それはⅠｇ内の資本追加ではなく、Ⅰｇの追加可変資本がⅠｇの労働者をつうじてⅡの商品を追加消費し、その分をⅡは不変資本に追加するよ、と言っているのだと思います。「限りでのみ」で読者を混乱させています。
金生産〔者〕のこのⅠ（ｖ＋ｍ）に由来する貨幣のうちから、Ⅱのある種の生産部門が原料などとして
これは＃０４４：第三篇２０章 単純再生産 第１２節 貨幣材料の再生産で検討済みで、前表式の「金地金２と貨幣２の交換」を言っています。
ⅠとⅡとのあいだで行われる転換にさいしての、暫定的な
ykbdataが補遺を読む前にも結論付けた、追加貨幣資本は翌生産年に向けたものであることが、ここで明示されています。
Ⅰにとっては、Ⅰｍの一部分が一方的に、反対購買なしにⅡに売られ、ここで追加的不変資本Ⅱとして役立つ場合にだけ生じる。
要するにこれは、Ⅰｍ相当の生産諸手段の一部分がⅡに売られ（第一例の拡大再生産1年目では１１０）、Ⅰの資本家はそれで実現した（貨幣化した）剰余価値の一部分を、Ⅱの消費諸手段に支出せず、ⅡはⅠｍに消費してもらえなかった商品価値分を追加不変資本にせざるを得ない、と言ってます。しかしykbdataは、それでは時系列の矛盾があるので、マルクスも認めているように、Ⅱは売れ残った商品（同１１０）は翌生産年のⅡの労働者の消費増分に備えて商品在庫とすること、翌生産年に向けたⅡの追加的不変資本は、すでの本年にⅠが生産した生産諸手段のうちに実在すること（同６６００のうちの１７６０）を解明しています。再掲載の下図をご覧ください。
Ⅱにとっては、同じことがⅠの側で追加的可変資本〔Ⅰｍの一部分の追加的可変資本への転化〕のために行われる場合。
これは前出のことをⅡを主語にして言っているだけです。
さらに、Ⅰによって収入として支出された剰余価値の一部分が、Ⅱｃによって補填されず、したがってそれによってⅡｍの一部分が買われ、こうして貨幣に転化される場合。
同じ例でいうと半分の５５０だけ支出されたⅠｍと、Ⅰｖは合わせて１６５０の商品Ⅱを消費するが、Ⅱｃの価値が再現した商品は１６００しかなく、単純再生産ならばⅡの資本家が剰余価値を全部支出して全部消費すべきところだが、拡大再生産ではこの不足分５０がⅠｍによって消費され、その分支出しないⅡｍ５０が蓄蔵貨幣として残るという事です。これは上の表式には出ていません。前にも言ったようにツジツマ合わせの感の強い表現です。
もし、Ⅰ（ｖ＋ｍ/ｘ）がⅡｃよりも大きければ、Ⅱｃは、その単純再生産のために、ⅡｍのうちからⅠが消費してしまったもの（同前５０）を、Ⅰの商品によって補填する必要はない。
これは何のことかよくわかりません。Ⅰが拡大再生産になっていれば来年自動的に来るよ、と言っていいるのでしょうか。
問題になるのは、Ⅱの資本家どうしの交換
そうではなくて、直後に、第２節で述べたように、Ⅰｃの内部の売るだけの部分と買うだけの部分のように「Ⅱのさまざまな事業部門の内部でも」このようなことがあり、「余った」Ⅱｍは直接に可変資本に転化される、とマルクスは説明しています。
最後の部分は、ykbdataがたびたび主張してきたとおり、追加可変資本はⅡの商品在庫を消費するという事を言っていると思います。
再生産論を終わって
信用を考慮すれば、これまでの困難は難なく解決します。しかし恐慌によって信用が破壊されれば、たちまちマルクスの論じた原初的なきびしい均衡条件が支配します。マルクスの再生産論は、決して資本主義的生産様式は可能だという主張ではなく、くりかえす恐慌は、資本市議的生産様式の困難性、根源的には資本と労働の対立をあらわにすると言っているのだと思います。
拡大再生産についてのマルクスの論述を理解する（理解したつもりになる）ために1カ月以上かかりましたが、何とか突破しました。
第二部を終って
これで第二部を終わりますが、不破氏の「読む」も含め、多くの研究者が拡大再生産論についていろいろな論争が起きていることを取り上げています。年々資本の有機的構成が高度化する拡大再生産の表式をレーニンが解いたという話を聞くと、ykbdataも挑戦したい気がしますが、もう頭脳の働きに限界を感じていますので、無理をしないことにしましょう。
第一部には４年を費やし、第二部には６年以上の中断をはさんで１４年、合わせて１８年以上の月日が流れました。超難解の再生産論を突破したところで、ykbdataの「資本論」の研究はしばらくお休みします。またいつの日にか。
２０２０年９月１６日 ｙｋｂｄａｔａ
｜トップページ ｜第２部の目次 ｜前のページ ｜次のページ ｜ykbdataのメールアドレス｜