性の起源と愛への進に関する研究＃０００：はじめに

◆◆◆性の起源と愛への進化に関する研究◆◆◆

＃０００：はじめに

　「性」の役割は非常に弁証法的です。生物学的にみれば性は生物の多様性の基礎です。７億年前に初めて有性生物（減数分裂）が生まれて以来、多細胞生物への発展を契機に、植物も動物もたいへんな多様性をあらわすようになりました。ありとあらゆる遺伝子の組み合わせが試されたような、あの有名なカンブリア紀（５億年以上前、三葉虫の時代）の生物大爆発までは、「性」は原生生物（遺伝子が細胞核のなかに保護された単細胞生物）のなかでひっそりと営まれ、現在なお営まれています。「性」の起源は、この原生生物の研究で、明らかになるでしょう。

　生物の多様性の基礎としての役割を発揮してきた「性」は生物の発展とともに、多様性を抑止する作用を持ち始めました。有糸分裂（私たちの体の細胞の普通の分裂）さえ、かすかではありますが、「性」のこの役割（自己保存性）の面影が残っています。減数分裂（私たちの生殖細胞の分裂のような、染色体の数が減る細胞分裂）とその融合（卵子の受精、染色体数がもとに戻る）はその際、いろんな仕組みで、遺伝子の異変を修復し、あるいは異変をやさしく包み込みます。愛のやさしさの根源には、こんな「性」の仕組みがあるようです。

　私たちのような「性」を持たない細菌は、Ｏ－１５７のように薗株ごとに、遺伝子が急速に変化します。私が一生わたしでいられるのは、さらに私たち人類が緩やかに進化しながらも、しかし基本的には私たち人類でいられるのは、「性」のこうした弁証法的な（対立物の統一と相互作用＝自己変革と自己保存の統一）役割のおかげです。

　そして「性」は、孫ができると誰でも喜ぶように、「生殖は死すべき生物が到達できる、永遠と不死にもっとも近いもの」（プラトン「饗宴」、予言者ディオティマのソクラテスへの言葉）であり、子孫を残すことにより「年齢によって失われたものを取り返せる」（同前）ものとして、生物個体の生命の有限性の中に、人類としての不死（核戦争や地球温暖化、あるいは小惑星の地球への衝突などで人類が絶滅しないかぎり、太陽系の数十億年という寿命は、人類にとって永遠に近いもの）を見出すのです。

　私の研究は、現実の男女の Love affair に首をひねることをスタートに、人類史の研究、生物学の研究、細胞学の研究、そして遺伝子学に到達します。これは生命の歴史をさかのぼる旅でもあります。しかしその研究の成果の叙述は、「資本論」と同様に、発生論的に行われます。すなわち、ＤＮＡから始まり、細胞の進化、動物、人間、社会、そして男と女の愛の現象へと跡づけます。

　時々は、現代人の「性」と愛の現象を例証しながら、「性」の起源と、私たち人間の愛への「進化」にいたる、地球上の生命３７億年の旅（宇宙の歴史の考えると「生命150億年の旅」とも表現できる）をいっしょにたどりましょう。

2002年4月8日 ykbdata

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